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「労災」の窓口対応について

労災保険指定病院を検索しよう


前回、初めて労働災害についてブログを書きました。→「労災」とは

今日はその続きで、医療機関の対応について書きたいと思います。当院は労災指定病院ではないこともあり、実際に労災手続きをしたことがありません。しかし、いつ何時、労災請求をしなくてはならない時が来るかもしれません。その日のために、少し予習をしておこうと思います。

ちなみに近隣の市町村で診療所で労災指定医療機関が何か所あるか調べてみたところ、市民病院が1件、診療所が1件のみでした。

労災指定医療機関がどこなのか調べるには、厚労省のホームページから検索することが出来ます。→厚生労働省 労災保険指定医




窓口での対応(非労災指定医療機関の場合)


労災指定医療機関の方は、「こんなこと当然知ってるよ。」というところでしょうが、問題になるのは、普段労災に慣れていない当院のような、非労災指定医療機関の窓口です。

「労災なんて、そんな人来るわけないし、もし来ても、うちでは扱っていないということで、どこか他の病院へ行ってもらおう。」というのが実態ではないでしょうか。

実際に労災の方が来られてから慌てる前に、少しシュミレーションをしておきましょうか。





  1. 患者様が怪我をして来院された場合、まず受傷原因を聞きましょう。受傷原因が業務中、若しくは通勤途上と判明した場合、労災保険を使われるかどうかを確認します。『どういった状況でお怪我なさいましたか?お仕事中、もしくは通勤途上のお怪我ですか?』

  2. 労災が確認できたら、自院が非労災指定医療機関であることを伝えます。

  3. 治療費については一時立て替え払いになることを説明し、患者様の理解を得ます『大変申し訳ありませんが、当院は労災指定の医療機関ではありません。指定医療機関でしたら、お持ちいただいた書類で(労災様式第16号の3など)治療費を直接労働基準監督署へ請求できますが、当院は指定外のため、そのつど患者様に治療費をお支払い頂きます。後ほど、手続きをしていただくと、治療費は戻ってきます(=療養費払い)」』。なお、治療費については、1点単価が医療保険と違い、12円または11円50銭(非課税病院)となっています。

  4. 業務災害の場合は「様式7号(1)」、通勤災害による場合は「様式第16号の5(1)」です。

  5. 治療費の請求方法を説明します。



労災の計算の仕方


健康保険では1点10円で決められていますが、労災の場合は1点12円または11円50銭(非課税病院)で計算します。算定にも健康保険とは違うルールがあって少し面倒です。例えば健康保険では初診料は282点ですが、労災の場合は3760円になります。その他細かい算定方法がありますので、詳しくはこちらをご覧ください。→労災診療費算定マニュアル


まとめ


如何でしたか?労災って大変ですよね。「労災かどうかを見極めるのも大変だし、計算の方法も健康保険と違うなんてもう絶対無理!」なんて絶望的にならないで。
電子カルテを導入しているところなら、労災用に切り替えると、ちゃんと労災算定してくれるのではないでしょうか。もしもの時にそなえて、自院の電子カルテがどうなっているのか確認しておくことも大切ですね。
ざっと、この要点だけでも頭に入れておくと、いざって時に役に立つと思います。


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「労災」とは

私も勉強します


実は、私のブログを見て下さっている方から、労災と自賠責についての質問がありました。

最初、「しまったなあ~。」と思ったのが正直なところ。というのも当院では全く労災も自賠責も扱っていないので、私自身ほとんど勉強をしてこなかったからです。

今回頂いた質問がよい機会。「知らないことに目を瞑るなよ~。」という神様からの啓示かもしれませんね(すいません、少し大袈裟過ぎました。)

今日から労災と自賠責について勉強したいと思います。




労災とは


労災労災とよく聞きますが、正式には「労働者災害補償保険」の略です。労働者災害補償保険法 総則から一部抜粋すると次のように書いてあります。

労働者が業務災害や通勤災害によるけが、病気、傷害または死亡したような場合に保険給付を行い、併せて被災労働者の社会復帰の促進、被災労働者や遺族の援護等の必要なサービスを行うことを目的としています。」

つまり、労働時間内に労働に伴うけがや病気が起こり医療機関にかかった場合は、健康保険ではなく、労災保険から支払われるということです。

労災は政府が管掌する保険制度で、健康保険とは全く違うものです。保険料は業務災害に責任を負う事業主が全額負担し、事業の種類ごとに災害倍率に応じ保険料が決められます。事業主が災害防止に成果をあげれば保険料は安くなります。通勤災害の場合は、保険料は全ての事業主が一律に負担します。

私たち、医療事務を雇用している診療所などの医療機関の事業主(理事長、院長など)も、労災保険は全額支払ってくれていて、労働災害が起こった時はそこから医療費が支払われるという仕組みです。ちなみに健康保険の保険料は労使折半です。



労災と健保の違い



  • 労災は事業所を退職した場合であっても、治るまで給付されますが、健保では保険資格喪失(退職)の時点で打ち切りとなります(ただし任意継続の場合は除きます。)。

  • 傷病手当金については、健保では給付開始から1年6か月を限度としますが、労災では1年6か月たっても治らない場合は、さらに継続されます。(なお、1年6か月を経て、重い障害がある場合は、傷病手当金から「傷病補償年金」に切り替えられます。)

  • 傷病手当金の給付額は、健保では標準報酬日額の2/3で、労災では平均賃金の8割です。

  • 労災の保険料は全額事業主負担、健保の場合は労使折半です。




業務災害か否か?


難しいのは、これは労災に適用する業務災害なのかな?それとも違うのかな?という判断です。医療機関に普通に健康保険を持って来られて診察をしたところ、実は労災適用だったということが起きることも十分あり得るので、最初に労災かそうでないかを見極めることが重要になります。労災か健保かによって全く請求の仕方が変わってくるからです。


①(労働者が通常の作業に従事する場所で、作業時間中に、使用者の指揮命令下に置かれている状態のもとで、その状態に起因して発生した病気やけが、または死亡)

  • 休憩時間に負傷した場合・・・× 使用者の指揮命令下に置かれている状態ではないので、業務災害にはなりません。

  • 勤務時間中に私用で人と面会しているときに負傷した場合・・・× これも指揮命令下の状態ではないので業務災害とはなりません。

  • 勤務時間中に水を飲みに行く、またはトイレに行くなど生理上の理由で席を離れた時に負傷した場合・・・〇 業務に付随した行為とみなされ業務災害となります。

  • 始業前の掃除や就業後の整理中に負傷した場合・・・〇 業務に付随する行為中の業務災害となります。



②(事業主の支配下にあって、勤務先を離れて業務に従事しているときに、その状態に起因して発生した病気やけが、または死亡)


  • 出張中、目的地に着いてから勤務先に着くまでの、宿泊中も含めた間に負傷した場合・・・〇 その時間帯の全ての行為を業務と考え業務災害となります。

  • 出張先で友人を訪問した際に負傷した場合・・・× 業務外となるため業務災害とはなりません。

  • 勤務先の運動会、宴会、慰安旅行などの会社の行事中に負傷した場合・・・× 業務遂行中とは認められず業務災害とはなりません。しかし、事業主の業務命令により出席した場合は業務とみなされ、業務災害となります。

  • 勤務先のスポーツチームの一員として、スポーツをしていた場合・・・×又は〇 それに対して賃金が払われていたかどうか、勤務先の宣伝目的があったかどうかによって、業務災害か否かが決まります。



③(勤務先の仕事が原因となって発生した疾病又はそれによる死亡)


  • 感染病棟の勤務によって感染症を発症したことが医学的に立証された場合・・・〇 業務災害に該当



④(事業所の設備不良、労務管理の不注意から生じた傷病または死亡)


  • 建物の床が落ちて負傷した場合・・・〇 休憩時間中に起きたことであっても業務災害とされます。




労災指定医療機関の対応


病気やけがの原因を聞き、業務上あるいは通勤途上で、労災保険の扱いになることを説明します。「療養補償給付たる療養の給付請求書」(業務災害の場合は労災様式第5号、通勤災害の場合は、労災様式第16号の3)の提出を受け、診療費はこの請求書によって労働基準監督署に請求し、窓口徴収は行いません。


労災指定医療機関以外の対応


病気やけがの原因が業務上あるいは通勤途上で、労災保険の扱いになると判断した場合は、自院が指定医療機関ではない旨を伝えます。診療費は患者が立て替えて支払い、領収書を発行します。患者に「療養補償給付たる療養の給付請求書」(業務災害の場合は労災様式第7号(1)、通勤災害の場合は労災様式第16号の5(1)を発行し、領収書を添付して労働基準監督署に請求を行えば、「療養の費用の支給」(療養費払いによる)が受けられることを説明します。


まとめ


当院は労災指定医療機関ではありません。なので基本的に労災っぽい方には、最初からなるべく労災指定病院へ行ってもらうようにしています。
しかし、健康保険のつもりで診療をしている途中に、「これは労災扱いだな」と気付くこともあります。本当は受診の際に患者様の方から「業務上の怪我です。労災扱いで。」と申告してもらえると助かるのですが、事業所によっては健康保険で受診を勧める場合もあり、患者様自体も労災の仕組み、権利が分かっていなく普通に健康保険で治療を進めていこうとする場合もあります。企業によっては、会社のイメージを落としたくないとか、労災保険額が上がるのが嫌で労災隠しをしようとする企業もあり、医療機関としては十分注意が必要ですね。
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