院長「今度、小規模多機能の○○さんのところへ往診するから。毎月第一火曜日の夕方5:00にね。」
???
事務員「先生、毎週決まって行かれるってことは、訪問診療では?そもそも○○さんは小規模多機能利用者様ですので、施設には往診できませんが・・・」
院長「そうなんだ。○○さん小規模多機能に通所中だよね。でも往診でいいよ。本当は毎月外来通院したいんだけど、○○さん、具合悪くて通院できないこともあるみたいで。通院出来るときは外来を受診するとは言っているんだけどね。だから往診扱いで。」
この会話どこかおかしくないですか?私は頭が???になりました。
○○さんは小規模多機能型居宅介護利用者。
外来通院が困難。
⇩
第1の疑問:定期的に行くのなら、往診ではなく訪問診療では・・・。
第2の疑問:小規模多機能型利用者はそもそも訪問も往診も不可能では・・・
第1の疑問:往診と訪問診療の違い
往診は患家からの求めがあってそのつど出向くもの。訪問診療は患者の同意を得て、あらかじめ医師が立てた訪問計画に基づいて患家に出向くものです。
以前書いた記事にもあるように往診と訪問診療は明らかにその目的が違うものです。
では今回の場合は何故往診となったのでしょうか。
まずは、○○さんは在宅での生活が主でありますが、家族のつきそい、助けを借りれば、外来通院が可能です。当然外来通院の方が、訪問診療よりはコストが安くすみます。ですので、出来るだけ通院を希望しているとのこと。通院が困難な場合のみ、往診を希望されたようです。
しかし、当院の医師は外来診療を主としているので、依頼があったからといって、いつでも往診に行けるわけではありません。週に2名程度のみ、決まった時間に訪問診療をしています。よって○○さんに対しても本来は訪問診療の枠を取り、予定に組み込みたいところですが、患家の「基本的に通院を希望する」という意向をくみ取って、受診困難な場合のみ、月1回訪問診療の時間帯に往診をするとなったようです。
第2の疑問:在宅医療を受けられる場所(小規模多機能)
往診や訪問診療が受けられるのは「普段生活している場所」です。保険診療上、患者が訪問診療を受けられるのは自宅や高齢者住宅などの普段生活している場所に限られるはず。通所介護(デイサービス)事業所は生活の場ではないので、往診や訪問診療は算定できません。
では、小規模多機能型居宅介護事業所はどうでしょう。通所では、往診も訪問診療も算定できませんが、宿泊日にはいずれも算定できるのです。サービス利用前30日以内に訪問診療料等(在宅患者訪問診療料、在宅時医学総合管理料、施医総管、在宅がん医療総合診療料)を算定した患者に限り、在宅患者訪問診療料は算定できます。
○○さんが小規模多機能で往診や訪問診療を利用するとしたら・・・
①宿泊日であること
②訪問診療の場合、あらかじめ1度自宅で訪問診療を受け、その後30日以内であること
この条件下で、往診・訪問診療ともに利用可能です。
*ちなみに老健施設など常勤医師が配置されている施設は「訪問診療」は認められません。入所者の傷病などから必要と考えられる場合の「往診」は認められます。
まとめ
在宅報酬の本をいくつか読んでみましたが、何度読んでも具体的に頭に入ってきません。しかし、こんな風に具体的に算定の可否を考える場面に遭遇すると自ずと頭に入ってくるものです。在宅の勉強はいつも必要とわかってはいるのですが、切羽詰まらないとスイッチが入らない。困ったものです。ひとつひとつ超ド素人レベルで悩んだこと、躓いたこと、ブログに綴りたいと思います。どうぞ、今後とも長い目でおつきあい下さい。
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