気になる言葉
以前から気になっていたことがあります。私の担当医師が紹介状の中で、頻回に使用する言葉に「おられます」という単語があります。どう使っているかと言うと、例えば、
「○○様は、3日前に転倒されたとのことですが、そのまま何もせず過ごされておられたようです。」
「いつもは、△△病院で点滴を受けておられます。」
「退院後は発熱もなく、自宅で生活されておられます。」
この「おられる」は、過ごしています、受けています、生活しています。を丁寧に言うために使ったものなのでしょう。この医師は生まれも育ちも西日本のとある地区。それが普通に正しいと思って使っていらっしゃるのです。
しかし、多分この言葉には、賛成派・反対派が全国で分かれるのではないでしょうか。
方言?
私は、現在関西ローカル地区に在住しております。
オッと、この「おります」は正しい。
本来、「おります」というのは、謙譲語です。
「父は今頃の時間はいつも、会社におります。」
「今日は午後から、家におります。」
「います」をへりくだっていう表現です。
しかし、私の住む地域では、口語体で、普通に「いる」ことを「おる」と言うのです。
「今日~ちゃん、家おる?遊びに行ってもいい?」といった感じに使います。
なので、誰かがどこどこにいるかどうか、丁寧に聞く時に、
「~さん、家におられますか?」が普通に尊敬語として丁寧な言葉として受け入れられているのです。
「おります」は本来、「いる」の謙譲語。それに尊敬語である「られる」をつけるのは、矛盾した使い方で、尊敬どころか間違った使い方です。下手をすると相手に不快感すら与えかねません。
しかし、私の住む地域では、尊敬語として普通に使われているので、話し言葉としては、地域限定では正しいと思います。
医師に間違いを指摘する勇気
今回の場合は紹介状(公式文書)として出す以上、間違った表現は直さなくてはなりませんよね。
問題はそこなんです!相手は医師です。おかしいなとは思ってはいても、なかなか切り出せなったんですよね。基本的に医師ってプライドが高いですし、下のものからアドバイスを受けるのを快く思わない方も多いもので。
しかし、昨日、思い切って紹介状を作成している時に、切り出してみました。
「先生の紹介状の中の『点滴を受けておられます。』って間違ってるように思うんですが・・・患者様を尊敬する表現なら『点滴を受けていらっしゃいます。』の方がいいのでは。またはドクター同士のやりとりなんですし、そんなに丁寧な表現ではなく『点滴を受けています』でもいいんじゃないですか?」と。
「そうだよねえ。確かに『あり、おり、はべり、いまそがり』だよね~。」「『おり』は、方言かなあ。公式文書には『おられます』はまずいかあ。ハハハ」と意外にもすんなり納得して頂けて、ホッとしました。
まとめ
日本語は本当に難しいですよね。特に敬語。正しいと思っていても間違っていることもたくさんあります。
今夜、ボランティアの日本語教室で、ベトナム人の男の子に聞かれて困ってしまった質問があります。
「先生、『腹をお立てになった。』はどうしておかしいのですか?」
「う~ん。来週までの宿題にさせて下さい。」と言って帰ってきたところです。
帰ってから、調べてみると、もともと「腹を立てる」は慣用句でそれ全体で一つのまとまりを持っているため、分解して敬語にしたりすることは出来ないようです。なので正しい表現としては、『ご立腹になる』『お怒りになる』というのが正しい使い方のようです。なるほどね。日本語恐るべしです。
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