骨粗しょう症薬と抜歯
先日の診察時の話です。いつも一人で診察を受けに来られる、難聴の高齢女性の方が、その日はお孫さんと一緒に来院されました。
お孫さん:「先生、うちのおばあちゃん、骨の薬って飲んでるんですか?抜歯をした後の治りが悪くて、口腔外科を紹介されたんですが、『骨粗しょう症の薬をのんだまま、抜歯をしたのが原因かもですね。』と言われてしまって。」
医師:「抜歯されたんですか。初めて聞きましたよ。確かにフォサマックという骨の薬をいつも処方していますよ。抜歯をした歯医者さんには、そのことを言われなかったのですか?」
お孫さん:「おばあちゃん、骨の薬を飲んでるかどうかも知らなかったみたいで。歯医者さんに聞かれてもわからなかったみたいで、そのまま薬を飲み続けたまま抜歯したみたいんなんです。」
どうもこの患者様。歯科で抜歯をする際に、お薬手帳を見せずにか、歯科医師の意図がわからなかったのか、フォサマックを服用したまま抜歯したようです。抜歯後の修復が悪く、その後口腔外科を紹介された様子。危うく顎骨壊死を起こしかけたようでした。
原因と対策
ここで問題なのは、何故このようなことが起きてしまったか。ということ。
- 患者様が自分の服用している薬を把握していなかった
- 家族がいつも薬の管理・診察など、関心を払っていなかった
- 歯科医が抜歯前に服用している薬について、患者様の話だけを聞いて納得し、かかりつけ医に問い合わせをしなかった
- かかりつけ医が診察時に抜歯することを聞き出せなかった
このように高齢の方で一人で診察を受けに来られる場合は、しばしこのようなケースが生じます。今回は幸いにも、大事に至る一歩手前でしたが、薬に関するトラブルは診察室で起こりがちです。
「そんなの医師の責任だし~」
確かに薬に関しては処方した医師の責任下ですが、その医師の一番身近にいて、診察室の現場にいるのは医師事務作業補助者の貴方。知識こそ浅いですが、何かおかしいと感じるチャンスを捉えることが出来るのは、医師事務作業補助者なのです。

医師事務作業補助者の重要性
私は、医師事務作業補助者だけが、診察室を冷静に見渡すことが出来る番人だと考えています。
医師は自分の思いで診察を推し進めようとする場合もありますし、看護師は処置等で現場を離れることもあります。医療事務員はカルテを通じてしか現場の状況はわかりません。
唯一、診察室での医師のミスを指摘できる存在。
私はそれが医師事務作業補助者だと思っています。カルテの隅々まで見渡し、患者様と医師の会話に耳を傾けて、何かおかしなことはないか。隈なくチェックするのです。
- 「先生、患者さん、本当はこんなことを言いたかったのでは。」
- 「この方の息子さんはいつもこちらに来られている○○さんですよ。」
- 「この方、緑内障があります。処方大丈夫ですか?」
- 「去年の同じ症状にこの抗生剤、効かなかったようです。」
などなど。特に薬に対して何かコメントすると医師に失礼と思われがちですが、私は浅はかな自分の知識をすべて集めて、おかしいと思ったことは臆せず先生に尋ねてみることにしています。
まとめ
医師事務作業補助者はやっと最近になって、あちらこちらで見かけるようになりましたが、電子カルテ入力が速いだけでは務まりません。医療事務の知識を持っているものが、診察室現場にいると、新たな算定に気付くこともあります。
「あっ。今の先生の話って肝炎指導料取れるんじゃない?」って気付いたり。
特定疾患の患者様の診察で「先生、今日のその処方は54の保険使用されますか?」と質問出来たり。
算定と医療知識。幅広い勉強が必要な仕事です。
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